大手不動産仲介会社の住友不動産販売がセンター(担当)ごとの業者買取をやめて、今後は専門部署が一括で業者買取の案件取りまとめを行うことになりました。

これってどういうことだか分かりますか?
今までは担当(センター・店舗)レベルで個別に買取案件に取り組んでいたのを、専門部署で一括で情報管理をして、登録業者にのみ情報を一斉に流すという仕組みに変えたということです。
実は今の不動産屋の一般的な買取システムというのは、担当の買取業者との付き合い次第で大きく買取価格が異なるという仕組みになっていました。
純粋な入札になっておらず、売主様に対して、最善の価格提案だったかといわれると疑問が残る仕組みになっていたのです。
今回は、なぜ住友不動産販売は、センター(店舗・担当)任せの買取をやめたのかを不動産歴20年以上、現役不動産屋の私が解説します。
ご覧いただくと、不動産仲介の買取における「闇」が分かります。
結論:売主よりも買取業者の利益のために動く担当がいるから
なぜセンター(個人)単位で業者買取をやってはいけないのか。
それは、売主様の利益(より高い買取金額)のために動くのではなく、買取業者の利益(なるべく抑えた買取金額で買取りを成立させる)のために動く担当が出てきてしまうという理由によります。
※これからの話の全てが住友不動産販売についてである、というわけではありません。ただし不動産仲介業者と買取業者とのあり得る付き合い方について、話をしていますし、住友不動産販売と取引実績のある買取業者から私自身が聞いた話を含みます。
買取と言いうのは本来オークションですので、売主にとっては、なるべく多くの買取業者に買取価格を提示してもらった方が、より高い金額が出る確率が高くなります。
ですから、例えば三井のリハウスでは、表立って公表はしてませんが、既に数年前から買取業者が1社のみでの商談(買取)は禁止されており、買取に至るプロセスは全件本社に報告しなければならない仕組みになっています。
ところが、買取業者の利益を優先して

この前高い金額で買い取ってくれたから、今度は少しでも安く買ってもらって利益を出してもらおう。
と考える営業がいたとしたら、どうなるでしょうか。
分かりやすく言うと、本来複数社に声かけすべきところ、便宜を図り1社のみにしか声をかけないということが起こります。
それではオークションにならずに、売主様の利益にならない可能性が高くなります。もちろんその1社がベストの金額である可能性もありますが、比較していない以上真実は闇の中です。
何故買取業者の利益を優先するのか
売主様というのは通常その1回のお付き合いで終わることが殆どです。
しかし買取業者とは何度も、数年にわたってお付き合いがあるため、場合によっては、買取業者の利益を優先して物事を考えてしまう担当が出てきてしまいます。
そんなことをされれば売主様の立場からするとたまったものではありませんよね?
住友不動産販売では、数年かかりで大掛かりな社内調査を行い、実際にそれで多くの社員が処分されました。
そのような事が起きないように、センター(個人)単位ではなく、専門部署で一括で管理をする、という話になったのです。
買取業者による接待や便宜
買取業者だって、買取業者同士で毎回競合するよりはうまく話をまとめてもらい、なるべく安い金額で買えればリスクは少なくなります。
買取業者の多くは、仲介をしていないため、基本的に買取の情報を取得する機会は限られます。そして大手に比べると情報量に差はありますので、不動産屋は大きな情報源になっています。
そのため、例え情報を少しでも優先的に貰うために食事やゴルフといった接待をしたり、頻繁にセンター(店舗)に差し入れをしたり、豪華なお中元、お歳暮を届けたりとまずは、大きな情報源である不動産屋に積極的に営業をしているところも少なくありません。

当然担当も人間ですから、どうせ情報を回すなら、何らかの見返りがある買取業者に優先的に情報を回すことはあり得ない話ではありません。
実際私が買取業者に聞いた話ですが、よく情報を回してくれる不動産屋には、もしくは良い情報を独占的に回してもらうために上限なしのクレジットカードを渡していることもあるようです。
そのために、ひどい場合には、一番高い金額を提示したにもかかわらず、実際にはその金額は売主様には担当の独断で提示されず、そこより安い金額の、「仲の良い」業者の金額のみが提示されることも起こり得ます。
もちろん度を越えた付き合いは、どの不動産屋でも服務規程違反になるはずですが、実際に起こっている話です。
買取情報提供までの流れ
不動産屋(特に大手)には、日々多くの売却相談がきます。
その中で通常の販売では、売却が難しい物件などもでてきます。
そういった時に「買取」が行われます。
※不動産買取については買取金額の仕組みやメリット・デメリットなど、別記事にしています。

まず売却相談が来れば、店長(所長)クラスが、担当に案件を振り分けます。
振り分け方は、担当エリアだったり、過去にその近くで売却の成約実績があるだとか、順番制だとか色々です。
※ちなみに住友不動産販売は、いまだにエリア担当制(○○市は誰々が担当です)をとっているセンターが多く、お客様は担当を選ぶことは出来ません。
そして担当が話をする中で、売主様から買取価格を出してくださいという相談になれば、買取業者に買取価格を提示してもらうという流れです。
通常は買取業者とのお付き合いも考えて、20社も30社にも声はかけません。(本来はその方が売主様のためではありますが)
ではどういった買取業者に声がかかるのか。

担当は、まず「付き合いのある」業者に依頼をして、買取価格を出してもらいます。
買取業者によって得意なエリアや種別(戸建・土地・マンション)がありますし、時期によっても出せる予算が異なります。
その中で
・過去に高い金額で購入してくれた実績がある事
・そのエリアに強い業者
・その種別(戸建・土地・マンション)に強い業者
・仲が良い業者
になります。
この中の良い業者というのが、先ほどの接待や、商品の送り届けといったところに繋がってくるのです。
そして言い換えると不動産屋(担当やセンター)で付き合いのない不動産屋には買取の情報は回ってきません。
現状の買取業務の問題点
通常売却活動をするにおいては、売主様と「媒介契約」を締結しなければ、売却活動を行ってはいけません。当然その中には買取査定も含まれます。
※媒介契約については別記事にしてありますので、合わせてご覧下さい。

しかし現状買取においては、媒介契約と締結せず、まず買取価格を提示することがほとんどです。
理由の一つとしては、一般に販売するわけではなく、買取の話がまとまってから、そのまま契約になるため、媒介契約はその時で良いとされているからです。
簡単に言うと、買取の話がまとまらなければ、わざわざ媒介契約の手続きをするのが面倒ということです。
まとめ:情報は専門部署より、登録業者にのみ提供される

今回、住友不動産販売はまとめると、買取情報に関して
①お客様からの買取情報は専門部署に集約
②買取業者は登録制になり、登録されないと情報は回ってこない
※原則自己申告だけでは登録できない
③専門部署が、取引実績等により情報提供先を選定
④毎回必ず、全ての申し込みを売主に提示
⑤情報は「媒介契約締結済み」のものだけ
としています。
これにより、媒介契約を締結していない販売活動はなくなるため、業法的にもクリーンな対応になっています。
しかし登録制にしたことで、登録から外れた買取業者の恨み節も聞こえてきていますし、何より全て金額勝負になると思われますので、担当を取り込んだ「調整」は不可能になりました。
買取業者からすれば、営業との付き合いの深さではなく、単純に正々堂々と金額勝負できるメリットがありますが、その結果どうしても買取金額が全体的に上がってしまい商売としてきつくなるデメリットも考えれます。
資金体力を奪われ続けてまで、住友不動産販売との付き合いをするのかしないのか、、といった判断を迫られる買取業者も増えるでしょう。
住友不動産販売とすれば、顧客第一優先、ということを宣言した形になりますが、わざわざ宣言しなければいけない状況でもあったということです。
そして、内部のキックバックによる悪しき習慣を絶つという、強い意志が見えます。
不動産屋業界では、住友不動産販売の今後の実際の運用も注目されています。
また他の大手がどう反応していくかも、今後の不動産買取に大きな影響を与えると思われます。
継続して注視していきます。
ではまた!
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