ネット銀行の金利が凄いことになっています。
10年固定でも0.5%を切る金利が出たこともあります。
しかし住宅ローンの相談をした時、多くの不動産屋はネット銀行をオススメだとは言ってくれません。
これは何故でしょうか。
ネット銀行だと普通の銀行と比べて、どこか問題があるのでしょうか。
今回は、昨年も数えてみたらネット銀行を含め21もの銀行との取引のお手伝いをし、『ネット銀行もオススメ派』の私が、「不動産屋がネット銀行をオススメしない理由」をお伝えいたします。
これを見れば不動産屋がネット銀行をお勧めしない理由と、その言葉の裏にある不動産屋の本当の事情が理解できます。その上でネット銀行の住宅ローンについてメリット・デメリット、最新金利について分かりやすく解説します。
結論:不動産屋は「住宅ローンの進捗」を把握しにくいためおススメしない
不動産屋がネット銀行を勧めない一番の大きな理由は
「住宅ローンの進捗(進み具合)が把握(確認)し辛い」
からです。
二番目は
「経験の長いベテラン営業ほど、ネット銀行の事がよく分からない」
ですが、これは今回無視します。
不動産売買において、買主様のスケジュール管理は不動産屋にとって最も大切な仕事となります。
特に住宅ローンを利用する場合、いつ事前審査が下りて、いつ本審査をして、いつ本承認が下りて、いつ融資が実行できるか、これらは引き渡しまでのタイムスケジュールの核となります。
例えば住宅ローンの本審査の承認は、契約書内に記載がある「融資承認取得期日」内に行わないと、最悪の場合「違約」になったり、使えるはずの「解除権」が行使できなかったりします。
※住宅ローンに関する契約解除については別の記事で説明していますコチラ

ところがネット銀行の場合、スケジュール管理がしにくいという理由があります。
不動産屋が伝えるネット銀行のをオススメしない理由
ただし、

スケジュール管理がしにくいので、ネット銀行を使わないで下さい。
とは言いにくいので、あの手この手でネット銀行のデメリットを伝えて、出来れば辞めさせようとしてきます。
なぜネット銀行だとスケジュール管理がしにくいのかを含めて説明していきます。
ネット銀行は実店舗がなく、担当との人間的なやり取りが出来ない
今までであれば、銀行の融資担当と話をして教えてもらったり、スケージュールを共有して、銀行から買主様に段取りを組んでもらったりと、不動産屋主導でスケジュール管理が出来ました。
銀行にとって不動産屋というのは、大きな紹介元であり、良いお付き合いが出来れば、より紹介が回ってきます。
ですから、銀行の熱心な融資担当の方は営業として不動産屋巡りをされています。
その付き合いの中で、不動産屋からすると色々と住宅ローンについて教えてもらったり、次の紹介を約束する代わりに、少しだけ無理してもらったり、といった人間関係の中での住宅ローンの相談が出来ます。

その中で不動産屋の担当と、銀行の融資担当とは仲良くなることもあるのですが、それが癒着に繋がらないように、長くても1~2年ごとに銀行の融資担当は異動になって変わっていきます。
不動産屋からすると、また信頼できる融資担当を探す必要があるので本当は嫌なのですが、仕組み上仕方ないとは思っています。
しかし実店舗のない多くのネット銀行では銀行の担当という概念も薄く、住宅ローンの内容を聞きたくても、ネットに載っていることしか分かりません。
しかも原則本人でなければ現在の住宅ローンの審査状況を教えていただけません。
ですから

店舗がありませんので、全部ご自身で段取りや、スケジュール確認など行う必要がありますので、大変ですし、怖いですよね
と言って出来れば自分の良く知っている都市銀行や地方銀行をオススメしようとするのです。
しかし、最近だとSBIネット銀行やイオン銀行などで対面式の実店舗があったりしますし、実際買主様から段取りを取ってもらえれば、直接ネット銀行とやり取りが可能なネット銀行も存在しますので、一概に全く把握できないとは言い切れません。
ネット銀行だから協力しない、という不動産屋であるならばそちらのほうが怖いです。
不動産の各種書類を自身で揃えるのが大変

登記簿謄本を法務局に取りに行ったり、資金計画書を作成したり、建築計画の概要者など、色々とご自身で揃えるのは大変ですし、間違えたら怖いですよね
住宅ローンの審査には、源泉徴収票や身分証明書以外にも、その審査をする不動産に関する様々な書類が求められます。
確かにそれらを買主様自身で揃えるのはとても大変です。
が、そんなの不動産屋が揃えればいいだけです、以上。
付き合いがないネット銀行だから協力しない、という不動産屋であるならば(以下略
インターネット環境必須であり、障害時には利用できない

ネット環境が必須ですので、サーバーエラーやシステムエラー、サイトのメンテナンスの時には使えませんよ。怖いですね。
という話もよくされますが、今時ネット環境が全く無い方は、そもそもネット銀行の住宅ローンを利用されないと思いますが、、
まぁそんなこと言ったら実店舗がきちんとある「み△ほ銀行」さんはどうなるのでしょうか。
ネット環境関係なく、システム障害でとんでもなく多くの方が困られてましたよね。
ましてや住宅ローンの事前審査や本審査の手続き等、よくサイトを利用するのは1~2か月程度の、その中の3・4回です。
滅多にないメンテナンスや、実店舗があっても障害は起きるのでシステムエラーなどどいった理由が、ネット銀行を勧めない理由にはなりにくいと思っています。
ID・パスワードを自己管理必須

IDとかパスワードとか忘れてしまったらどうしますか?怖いですね。
今の時代、アマゾンでも楽天でも、ネット銀行に関わらずIDとパスワードは忘れたらかなり面倒です。
だから皆忘れないように工夫したりしています。
あまり買主様を馬鹿にしてはいけません。
超低金利なのは一番安い金利が記載されているだけ

ネット銀行の金利ってかなり安いですが、あれは一番低い金利が書いてあるだけで、実際は頭金によってはもっと高くなりますよ。怖いですね。
実際、その通りでどのネット銀行も一番低い金利を適用させようと思ったら、ある程度の自己資金≒頭金が必要です。
ただしそれは、都市銀行も、地方銀行も、まったく同じです。
どこも一番低い金利を前面に押し出して、顧客の興味を引こうとしているのです。
ネット銀行だけがそのように表記しているという事実はありません。
金利をネット銀行の都合で勝手に変えられてしまう

ネット銀行はネット銀行の都合で金利を突然変えてしまうことが出来るようになっています。怖いですね。
多くの都市銀行や、地方銀行の変動金利の金利というのは「短期プライムレート」(覚えなくても良いです)に基づいて決定されています。簡単に言うと、日銀が決めた基準だと思ってください。
ですから、銀行の都合で、

ちょっとうちの銀行の経営最近やばいし、儲けたいから金利を大きく上げるわ
という事は出来ないのです。
ところがネット銀行のほとんどは自分達の基準で金利を決定しています。
分かりやすく一例をあげます。
例えば、大型ショッピングセンター等を全国展開しているEオンホールディングスが母体の「Eオン銀行」が仮にあるとします。架空の銀行ですよ。
母体であるEオンホールディングスがある日、不祥事から経営難に陥り、資金が必要だ、となった場合はEオン銀行の都合で金利を上げることが出来るのです。
ですから、これに関しては事実です。
しかしそんなことをすれば、確実にそこでローンを借りた人々が他の銀行に借り換えるので、実際にはどうなんでしょうか、、と思わなくはないです。
事務手数料が普通の銀行に比べてとても高い

ネット銀行は普通の銀行に比べると事務手数料がとても高いんです。怖いですね。
ネット銀行は事務手数料が、通常の銀行に比べて多くかかるのは事実です。
ただし、ネット銀行では(原則)保証料が不要です。
某都市銀行 | 某ネット銀行 | |
保証料 | 57万円 | 0円 |
事務手数料 | 3万 | 60万円 |
合計 | 60万円 | 60万円 |
分かりやすく表にするとこんなイメージです。
もちろん借入額や、借入年数にもより、普通の銀行の方がトータル高くなったり、ネット銀行の方がトータル高くなったりしますので、事務手数料が高いと言ってもそれだけで、一概にどちらが有利とは言えないのです。
住宅ローンの審査がとにかく厳しい

ネット銀行は住宅ローンの審査が厳しいんです。
私なんかは審査ボタン押した5秒後に審査に落ちました。
怖かったです、、
本当に一番の理由を上げるとすれば、『審査が厳しい』という事になるでしょうか。
今の低金利時代、もう住宅ローンだけで利益は殆ど出ません。
それだけに良質な顧客の囲い込みを、どの銀行も考えています。
ネット銀行の場合、住宅ローンという大きなお金の流れにおいて超低金利で囲い込み、それぞれの経済圏への誘導が図れれば、膨大な情報を集約することが出来ます。
それらの情報から、様々な買い物への誘導から金融商品の販売や金融サービスの提供を行い、トータルで利益を上げていくことが出来るのです。

うちは住宅ローンで長い間お付き合いしてもらって、最後、退職金を当行にお預けいただければ、とか考えています
と大真面目に話していた地方銀行とは、既に行く末が違うのかもしれません。
話が逸れましたが、それだけに審査が厳しいのです。
普通の銀行では通っていても、ネット銀行では落ちた方をたくさん知ってます。
明確な審査基準も公表されていませんが、とあるネット銀行では噂では勤務先の資本金1億以上がベースとか、自己資金0では借りれないとか聞いたこともあります。
つまり、いわゆる属性と呼ばれているものがおそらく普通の銀行以上に、非常に重要視されています。
普通の銀行と違って、「面談」もありませんので、「情」「人柄」に訴えるような事もあり得ませんし、全て打ち込んだ情報、用意した書類のみで審査されます。
ですからこの内容について、審査ボタンを押した5秒後に落ちた話は嘘だとしても、審査が厳しいという話自体は間違ったことは言っていません。
審査スピードがとにかく遅い

ネット銀行は住宅ローンの審査が遅いのです。
この前も気に入った物件の住宅ローンの審査が中々進まなくて、そうこうしている間に他の方に買われてしまいました、怖いですね。
事前審査の期間が普通の銀行よりかかる、というのもよく聞きます。
普通の銀行なら早ければ2~3日、遅くても1週間程度で審査結果が出ます。もちろんこれも、銀行の融資担当との人間関係の中で、早めに稟議上げてもらったりという事があるのですが、ネット銀行では当然融通は利きませんので、ひたすら待つしかありません。
属性が良い人は1週間ほどで承認が出たとも言ってますし、2週間以上要した方も知っています。
最初のスケジュール管理が出来ないという事にも繋がりますし、実際に審査を待つ間に希望の物件が現金の方に先に購入されてしまったという話も間違いなくあり得る話です。
※購入申込時に住宅ローンを利用する場合、事前審査が通っていないと申込できない話はコチラ

ですからこの内容についても、あながち間違ったことは言っていません。
ネット銀行の住宅ローンのメリット
ちなみにネット銀行のデメリットについては、不動産屋だけではなく、実は都市銀行も、地方銀行でも、似たような内容で話が出てきます。
特に金利面だけでみると、現在相当数がネット銀行に流れています。
2017年全体の15%程だったネット銀行の住宅ローンは、2020年現在30%強となりました。
この割合はさらに増えていくことでしょう。
ですから、デメリットだけではなく、メリットも伝えた上で判断をしてもらうべきです。
ネット銀行は金利が低い (最新金利2022年5月時点)
誰もが知る最大のメリットです。
実店舗を持ってないため、店舗の維持管理費用や、様々な人件費、土地代といったコストをカットできるため一昔前では考えれれない低金利を実現しています。

2021年12月時点での最新金利を掲載しますので、参考にしてみて下さい。
(2022年5月時点 変動金利 )
1位 みずほ銀行(ネット専用) 0.375%
2位 PayPay銀行 0.38%
3位 auじぶん銀行 0.41%
みずほ銀行は、相次ぐシステム障害で失墜した信用を取り戻すべく金利で顧客獲得を狙っているようですが、堕ちた信頼は取り戻せるのか、、
PayPay銀行は旧ジャパンネットバンク、老舗ですね。
auじぶん銀行は以前まで最安金利の常連でしたが、金利だけに拘らない方針が見え隠れします。
(2022年5月時点 10年固定)
1位 イオン銀行 0.67%
2位 PayPay銀行 0.69%
3位 au自分銀行 0.695%
(参考:2021年10月時点 10年固定)
1位 auじぶん銀行 0.495%
2位 PayPay銀行 0.499%
3位 三井住友信託銀行 0.5%
10年固定は以前と比べて金利が上がっています。
10年固定は長期金利の上昇に伴い、金利が上がり続けています。
2021年10月時に比べてみると金利が上がっている様子がよく分かると思います。
今後の動向に注目です。
ネット銀行の住宅ローンは、金利の根空上げ、値下げはありますし、審査が厳しいですが、借りる事さえ出来れば、大きなメリットととなります。
店舗に出向く必要なし、24時間利用可能
普通の銀行の場合、基本は土日が休みのため、どうしても平日に手続きをする必要がありました。
いまでは土日も店舗で対応している「住宅ローンセンター」的な店舗が増えては来ていますが。
それでも昼間のみといった制約がありますが、ネット銀行では夜間に限らずいつでも、どこからでも、手続きが出来ますので、大きなメリットです。
特に銀行は大抵人出の多いところにありますので、現在のようなコロナ禍においては接触の機会を減らす意味でもメリットを享受できる方は多いと思います。
まとめ:不動産屋の意見は、利用者のためではなく不動産屋の都合のみ
不動産屋がネット銀行の住宅ローンをオススメしないのは、都市・地方銀行の融資担当との直接的な、または人間的なやり取りが出来ないためです。
ネット銀行を機械的だと決めつけ、スケジュール管理が出来ないのを面倒がってオススメしていないという身勝手な理由からです。少なくとも買主様側の立場に立った発言ではありません。
確かに審査は厳しい面はありますし、スケジュールが読みにくい点もありますが、今後長く付き合う住宅ローンにおいて金利の安さは候補として十分に魅力的です。
ただし金利だけにとらわれず
・諸費用等、合計の総金額
・団体信用保険の内容
・繰り上げ返済の可否
この辺りも総合的に見ていけると良いと思います。
また三井のリハウスでは提携銀行を優先的に紹介せよという、謎の子会社からの圧力もあり迂闊な相談には気を付ける必要があったりしますのでご注意ください。

住宅ローン選びは、不動産選びと同じくらいに重要です。
しっかりと比較して、良い条件のローンを選びたいですね。
ではまた!