不動産仲介業界にコロナ感染者が多い理由【在宅勤務は不可能なのか】

不動産業界「裏側・真実編」

2022年度においても仲介不動産会社にも当然コロナ感染の影響は出ておりまして、各社のホームページには続々と感染に関する発表が出ています。
もちろん大手は全国展開に近いところも多く、その分支店やセンターが多くあり、なおかつキチンと発表しているためそのような印象がありますが、昨今の状況により感染は広がっています。

特に三井のリハウスでは令和4年1月28日には一挙に20拠点で感染者が出たという発表がありました。
その後も継続して感染者が出ています。
(今後発表される感染者数も相当数おられるようです)

三井のリハウスをはじめとして仲介大手各社はコロナ対策として様々な取り組みはしていますが、それでも感染してしまうのはなぜでしょう。
それは「不動産仲介営業」という業態における特殊性や、会社の方針にあります。

今回不動産業界25年、現役不動産屋の私が、なぜ不動産仲介業界にコロナ感染者が多いのかを解説いたします。

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結論:不動産仲介業界は「在宅勤務」を諦めたから

一つの例を出します。

業界最大手の三井のリハウスは2020年の4月から5月にかけて、つまり第1回目の緊急事態宣言が出た際には、全国の店舗を閉める決断をしました。
店舗は空けず、営業活動自体は続けるものの、営業社員は在宅勤務を基本として、案内、契約、決済業務を行わない形を取りました。

まだウイルスの脅威も分からない中、不動産仲介業界で唯一の試みではなかったかと記憶しています。
その顧客の生命や健康を第一に、店舗自体を閉めるという決断は評価されるものでありますが、その結果、三井のリハウスは業績を大きく落とすことになりました。(営業活動ほぼしていないのですから当然ですね)
※それでも2021年度の仲介実績がNo1だったのは驚きですが

しかし他の大手が追随(店舗クローズまでは行わなかった)しなかったことで一人負けをした結果、それ以降の方針に大きな変化がありました。

これまでは「出勤あるいは在宅勤務」のいずれかを考え方の基本としておりましたが、当社の多くの事業が「人が人に対して行うサービス」で成り立っており、在宅勤務を多く取り入れられる業態ではないのが実態です。

一方、当社事業は事務所外にて業務を行う(実査、調査、下見等。以下、「外出勤務」といいます。)機会も多く、これらの業務自体は感染防止・感染拡大防止の観点においてはリスクが低いものと考えられます。

そのため、今後もオフィス内が「密」とならないよう引き続き配慮するとともに、冒頭の趣旨に鑑み、各自の業務内容や状況に応じ、「事務所での勤務あるいは外出勤務、または在宅勤務を組み合わせた勤務形態」を意識して業務を行うことが重要となります。

三井のリハウス 「勤務形態の考え方」より

要するに、仲介営業は
「外に出る仕事が多く、在宅向きではないし、密になる空間での業務も少なく、対外的なリスクは低い」
ので、在宅は基本実施しないという方針になったということです。
これは三井のリハウスに限った話ではなく、住友不動産販売も、東急リバブルなども大なり小なり同様です。

もちろん在宅で仕事が全くできないというわけでもなく、実際にバーチャルオープンルームや、Zoomなどでの受付・相談をおこなっている仲介会社も多くありますが、現実的に、在宅だけで完結しているところはごくわずかだと思います。

特に業績に直接つながる「案内(内覧)(見学)」は、在宅では対応できない事が多く、かといって不動産を実際に内覧せずに購入される方は(現地を見ず写真だけで購入される方)はごく稀です。
※そもそも実際の内覧なしでの契約は、後々のトラブルを心配して不動産会社側がリスクが高いと嫌がります。

三井のリハウスは、やはりお客様を案内しないことには商談は一切前には進まない、業績にはつながらないという事で、「在宅では成り立たない」と割り切ったということです。

もちろんこれは一度完全に店舗をクローズしたからこそ導き出された決断ではありますが、「在宅勤務」を諦めた結果、実際感染者は周囲の感染者数の傾向に合わせて、しっかりと増加してしまっているのです。

これが三井リハウスをはじめとする多くの不動産仲介業者にコロナ感染者が多い理由です。

業務別に振り返る、「在宅勤務」○と×

不動産業界は仲介だけに限りませんが、まだまだアナログな業界であり、契約ともなると数十枚、数百枚の書面が用意される世界です。
いまだに署名・捺印が必須な状況で、在宅では当然不可能になる仕事も多いのです。

それでは実際に「在宅勤務」を諦めなければならないのか、業務(仕事)別に振り返ってみます。

物件調査:×

役所に行って資料を取ったり、ヒアリングをする必要があります。
もちろんネットで資料を取れる行政も多いのですが、個別のヒアリングはそれ用に資料を要しないと答えてくれないことが多いのでまだまだ在宅だけで完結はしません。

現地調査:×

言わずもがなですが現地に行かずに調査は不可能です。測量も出来ませんし。
仮にストリートビューで見たとしても、一部しか見れず、最新の状況でないことも多いので、在宅では限界があるため出来ません。

査定書作成:△

現地を見にいかない「机上査定」であるならば、在宅でも出来そうです。
(戸建て・土地のみ)ただし外からだけでも現地を確認できない場合は精度は落ちます。

訪問しての査定は当然在宅勤務では出来ません。
Zoomなどで簡易的に家の中を見せては貰えたとしても、やはり「臭い」「音」「近隣の雰囲気」などは分からないため机上査定とほとんど変わらない気がします。

⇒(参考)不動産屋が家にやってくる「訪問査定準備編」

案内:×

VRで見学できるところもありますが空家に限定されますし、もちろんVRでは「臭い」や「近隣の様子」「音」などが分かりません。
鍵を貸し出し、お客様だけで現地を確認し貰うことも可能ではありますが、防犯面や戸締りなどの管理リスクから実施しているところはほぼありません。

契約:×

資料を提示しながらの重要事項説明や契約書の説明は、まだまだオンラインで実施できる体制が整っていません。署名・捺印に変わるものが電子承認の形でできるようにならない限り在宅ではまだまだ出来ないのではないでしょうか。

決済(引渡し):×寄りの△

非対面決済などの整備が進んできてはいます。登記に必要な書類は司法書士が事前に面談し書面を揃えることは可能です。(ただし交通費など上乗せになる場合が多いです)

しかし、やはりお金や鍵の受け渡しの煩雑さ(リスク)があるため、利用頻度は低いと思われます。

住宅ローンにしてもネットバンク以外は銀行への来店を求められるでしょうし、抵当権の抹消の確認など絡めば、かえって対面より時間がかかり確認で煩わしいと感じる人が多いと言えます。

事務作業:△

物件をホームページを掲載したり、お客様に連絡をすることくらいは出来ると思いますが、個人情報自体を自宅へは持って帰れないため、また契約書作成に必要な関連資料は物理的にも重たいため持って帰ることがためらわれます。

⇒(参考)不動産屋の営業のカバンは何故重い?


出来ることが限られているため、(営業職の)事務作業は基本的にはかどりません。

以上の事から、残念ながら仲介営業は「在宅勤務では仕事にならない」職種であると言えます。

コロナ感染者の発表についての姿勢を調査

また今回、不動産売買の仲介ランキングに基づいて、従業員にコロナ感染者が出た場合の発表姿勢について調べてみました。
当然全国規模での展開をしているところになるのですが、その分感染者が出る可能性も高いはずです。

「人に対して行うサービス」だと言い切っており、顧客に接するというその形態から、影響が大きいため、当然社員が感染してしまった場合にそのアナウンスは明確迅速でなければなりません。

1位:三井のリハウス(三井不動産リアルティ) △

三井のリハウスとしてのブランドホームページには記載なし 
ただし三井不動産リアルティ株式会社のホームページのトップページに「当社における新型コロナウイルス感染者に関するお知らせ」記載あり

「三井不動産リアルティ株式会社」ではきちんとトップページに載っており評価できますが、「リアルティ」のホームページ見る(検索する)人は圧倒的に少ないと考えられるので、三井のリハウス上で発表がないのは正直不親切だと思います。

2位:住友不動産販売 ×

トップページには記載なし
「お知らせ」にも記載がなく「お知らせ一覧」にも記載なし
「お知らせ一覧」左側の「会社情報TOP」にまで行くと、ようやく「新型コロナウイルス感染者の発表について」記載あり
 
こちから粘り強く探しに行かなければ、下手したら気付かないレベルであり、こちらも不親切というか伝えたくないのかと邪推されても仕方のないレベルです、、 

3位:東急リバブル ×

トップページでは記載なし
「お知らせ」一覧にも記載はなし
「お知らせをすべて見る」から飛ぶとようやく「当社における新型コロナウイルス感染について」記載あり
 
こちらも探しに行くぞ、という気持ちがなければ、見つけることが難しいレベルです。

4位:野村の仲介+(野村不動産ソリューションズ)△

「野村の仲介+」としてのブランドホームページのトップぺージに記載なし
リハウスと同じく、野村ソリューションズのサイトに「ニュースリリース一覧」があり、その中で記載あり 
 
「野村ソリューションズ」にはトップページには記載はあるものの、リハウス同様ブランドホームページ(多分一般の方が一番に見るであろうHP)には記載がなく不親切と感じます。

5位:三井トラスト不動産 ○

トップページの「お知らせ」覧に感染者発生の記載あり

6位:みずほ不動産販売  ○

トップページの「ニュース&トピックス」覧に感染者発生の記載あり
 


多くの会社がホームページのトップ画面に「感染者発生」のお知らせは掲載しておらず、色々と探してやっと出てくるところが多かったのが意外でした。

もちろんホームページの構成を急に変えられないとか、不安を必要以上に煽りたくないのでひっそりとお知らせしたいとかあるかもしれませんが、一番気になるのはお客様です。

私は濃厚接触者になるならば早めに教えて欲しい」と思うのが、当然の事です。
しかしながら発表までのタイムラグや掲載方法などを含めて、大手と言われている多くの不動産会社でもまだまだ「顧客優先」には見えないと言えます。

まとめ:不動産仲介営業においては「在宅勤務」は非効率で非現実的

仲介営業という職種の特性上、外に出て業務を行う(実査、調査、下見、案内等)機会も多く、これらの業務自体は感染防止・感染拡大防止の観点においてはリスクが低いものと考えられます。

いつだれが感染してもおかしくはないウイルスですが、特に不動産の仲介営業という「人に会わなければ、契約成立が難しい職種」においては、今後も感染のリスクはあるでしょう。

事務所(店舗・センター)の消毒など、保健所の指示には従っているはずですが、現在の感染者数の増加を見るに、保健所自体の機能が麻痺し始めています。

経済活動も回すという社会的使命の中、何を優先するのか見られている時代でもあります。

仲介不動産業として、今後も時代に合わせて急速に変化していく姿勢を見せて欲しいものですね。

ではまた!

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この記事を書いた人
エネミー伊吹
エネミー伊吹

不動産業界25年の現役不動産屋。
大学卒業後、住宅メーカーに就職し1年目に全国新人トップを取る。その後自身で設計した間取りで、実家を建て替える。
20代後半から土地活用会社にて賃貸と賃貸市場のマーケティングを担当する。
現在は仲介不動産会社に勤め、年間200件前後の不動産に携わり、毎年100組以上のお手伝いをする傍ら、ブログを書く日々を送る。
いちごを育てながらカステラを自分で焼く。甘党。

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