自宅を売却して、お金を受け取った後も自宅にそのまま住み続けられる、、そんなこと出来るのですか?
出来るんです。
リースバックという言葉を聞いたことはあるでしょうか?
リースバックとはリースバック会社に自宅を売却し、売却代金を得た後も自宅に住み続けることの出来る夢のような仕組みです。
そういった仕組みから、主に老後資金の捻出や引っ越しが出来ない事情がある人などに需要があるようです。
しかし売却後のトラブルも増加しており実際ここ1年ほど、利用された方のお話を実際に何件かお話を聞く機会がましたが、その中でリースバックの闇とも言えるような事実が見えてきました。
今回は不動産業界に20年以上いる私が、リースバックについて、リースバック会社が謳うメリットとその裏側についてお話をいたします。ご覧いただくと、どういった時に利用するとメリットがあるのか、またリースバック会社にカモにされないための方法が分かります。
結論:リースバックは年配の方の老後の資金対策にはなり得ない
リースバックは、メインターゲットとしている「老後資金の獲得」と「自宅に住み続ける」ことを望む高齢の方には向かないシステムです。
理由は、自宅が「安く買い叩かれる」ことと、「高い賃料で住まわされる」という2点です。
以下順番に解説していきます。
リースバックの仕組み:自宅を売却して、その後賃貸で貸してもらう
まずはリースバックの仕組みからお話をします。
リースバックはまず、利用希望者が売主となりリースバック会社に自宅を売却します。

売却をしたので当然、売却した代金をリース会社から受け取ります。
本来ならば、ここで、自宅を明け渡して引き渡さなければなりません。
しかしリースバックでは、そのままリースバック会社から、旧自宅を賃貸として借りることによって引っ越しをせず、そのままそこに住み続けることが出来ます。

「売主(所有者)」から「借主」と立場を変え、お金を受け取った後も済み続けることが出来る仕組みになっているのです。
リースバックのメリットの裏側
リースバック会社は

買取った後、そのまま住んでもらって結構です。
と言ってきますが、最終的には、
安く買って、高く転売する
ことにより利益を出すことが目的です。
ですから、長く住み続けられたら困るのです。
そんな事情があることを、ご理解いただきながらリースバック会社が謳っているメリットをご覧いただきます。メリットのその裏側を解説していきます。
メリット1:リースバック会社による買取のため代金は一括支払い
リースバックはいわゆるリースバック会社による『買取』です。
売却代金は一括して支払われれますが、これは一般の方に売っても「分割」でお金を貰うなんてことはなく「一括」での支払いになりますので、一括支払いというアピールは残寝ながらメリットではありません。
問題は「買取」だという事です。
買取の仕組みについては別記事にしましたので、合わせてご覧下さい。

リース会社は相場で買取ってくれません。慈善事業ではないからです。
売却した後もそのまま住めるなんて言う美味しい話には裏があります。
「買取」は一般的に相場の60~70%の価格になります。
つまり3,000万円で一般的に売れるとしたら、「買取」は2,100万円で売却するという事になります。
大抵の方はこのことを理解しないまま、「そのまま住める」という事で言いくるめられて売却をしてしまうのです。
メリット2:リースしたお家をそのまま利用できる
売却(リース)した自宅に住み続けることが出来ます。大きなメリットです。
ただし、
家賃をリースバック会社に支払う必要があります。
そのこと自体は昔からありますし、特に目新しことではありません。
しかしそれを「リースバック」という少し格好良い言い方に変えているだけなのです。
そして昨今トラブルになっているのは
実は家賃設定が相場より高い
ということです。
相場より高い家賃を支払わされた結果どうなるか。
数年で、売却して受け取ったお金を食いつぶす
ことになります。

一旦整理しますね。

相場が3,000万円のお家が、「買取」により2,100万円で買取られます。

そして、そこに家賃相場が9万円くらいのところを15万円の賃料設定をされます。
年間で180万円の支払いとなります。
もしこれが老後の資金として売却したのであれば非常に残念ですが
2,100 ÷ 180 = 11.6
つまり、11年半で売却した資金は使い果たすことになります。
もちろんその11年のために自宅を売却して、賃貸の権利を得たのだ、という事であれば問題ありません。しかし長生きをして、もし万が一賃料が払えなくなれば、自宅はすでに自分のものではありませんし、その時の年齢如何によってはもう入れる賃貸はないかもしれません。
ここがリースバックの一番怖いところになるのです。
※ちなみに先ほどは2,100万円の買取としましたが、もしこれが1,500万円だとしたら、住めるのは8年程です。
メリット3:売却代金を一時資金として有効に活用出来ます
自宅を売却したわけですから、その売却額を受け取ることが出来ます。
もちろん使い道は自由です。
しかし先ほどの通り、今後住み続けるのであれば、一時金として使えば使うほど、住むことのできる年数が減っていく計算になります。
その資金は一時金という扱いで良いのか、よく検討しなければなりません。
メリット4:人に知られる事なくスムーズに手続きが可能
「買取」ですので、一般の売却手続きとは異なるためスムーズに売却出来ます。
仲介や競売のように物件売却情報が一般に広く公開されません。
ただし、その分「安い」のです。
メリット5:ご近所に知られずに今までと同様に住み続けられます
一般公開されないため、人には売却したことを知られることはありません。
今までと同様に住み続けられますが。「高い家賃」を支払ってです。
メリット6:将来的に再度購入(買戻し)する事が可能
リースバックでは、将来的に本人がこの物件を再度購入することもできます。
期間の定めもないことが多いです。
ただし
買取金額の1.3~1.5倍の価格で可能になるのです。
現実問題、このリースバックという、安く買い叩かれ、高い賃料で居住しなければならない制度を利用している時点で、再度購入できる資金が出来るとは思えません。
質屋のような言い方をしていますが、額が違いすぎます。

計算したくもないですが、2,100万円の1,3倍は2,730万円です。
これが売却してから3年後だとすると、540万円の賃料が発生しているので
2,730万 + 540万円 = 3,270万円 で買い戻したことと同じとなります。
ちなみに購入時の諸費用もかかるので、現金でも3,420万円程必要です。むー。
メリット7:固定資産税が不要
不動産を所有していると毎年固定資産税等の税金がかかりますが、リースバック利用後は賃借人になるので固定資産税はかかりません。
年間の固定資産税にもよりますが、ある程度築後の年数の経過した一般的な大きさの家であれば6~15万円ほどですので、節約できたとしてその程度です。
メリット8:仮住まいの必要がなし
買変えを検討している場合は、新居に入居するまでのあいだ、一時的な仮住まい先を用意する必要がなく、そのまま住み続けられます。
その安く買い叩かれる金額で、次の住み替え先で気に入るものが出るのならば、です。
そもそも「引渡し猶予」をつけたり、方法はいくらであるはずですが、何故かそのメリットを強調されますね。
※住み替えの流れやパターンについての解説は別の記事で説明をしています。

メリット9:引越し費用が不要、保証人も不要
自宅を売却して新居を探す場合には、入居の際の費用や保証人、さらに引越費用が必要となります。
しかし、リースバックの場合そのまま住み続けることが出来るためその費用が不要です。

引っ越しの費用・労力に関してはその通りですが、保証人は今時は非常に少ないケースになります。
カード会社の保証審査に受かることが入居条件のところがほとんどですので、今の時代保証人が不要といわれても、そもそも不要です。

メリット10:住宅ローンが残っていても対応可能
昨今の情勢により、収入が減少して住宅ローンの支払いが困難になってしまった方でも、リースバックであれば対応可能です。
ただし「買取価格」<「ローンの残債」の場合は原則買取が出来ません。
支払いが困難になったけれども、今の家に住み続けたい、という場合には良いように見えるかもしれません、だってローンが消えてなくなりますので。
ただし
相場より高い家賃を要求されて、住むことになります。
現状のローンの支払いがきつい方が、支払い続けることが出来ますか?
リースバックはどういったケースなら利用するに値するか
メリースバック会社が謳ているリットを通じて、真実をお話してきましたが、それでも利用できるケースは存在します。
特徴としては、住み替えです。
- 住宅ローンの残債が残っていて二重ローンが組めない場合
- 住宅ローンの残債<買取価格が条件
- 住宅ローンを組むためにリースバック買取で売却を確定させる
- 賃貸で自宅に住み続けながら、新たな住宅ローンを組み、住み替え先を購入
- 住み替え先の引き渡しを受けて引越しをする
要するに、買取のメリットを活かして、その後仮住まいが要らないメリットを享受しながら、次の購入先を探すということです。
この場合は旧自宅を賃貸で借りる期間も限られるため、(買取金額と賃料次第では)デメリットよりもメリットが勝ちます。
リースバックでカモにされないために
リースバックというシステム自体は素晴らしいものの、実態は薄いメリットを前面に押し出し、情報弱者を食い物にする形が横行しています。ですからトラブルが増加しているのです。
ではどうすればカモにされないか、もしくはきちんとしたリースバック会社の見分け方をご説明します。
買取額の正しさを確認する
リースバックで自宅を売却、といっても結局はただの「買取」です。
ですから、買取額が正しいかどうかは、他の不動産屋に確認をすれば良いです。
※例えば、ここでしか一括査定が受けれない大手6社による「すまいValue」など。


一般の査定額(普通に売る時)と、リースバックの買取価格と差が少なければ少ないほど、良い買取価格ということです。
逆に差が大きい場合は、「安く買い叩こう」としてきたリースバック会社です。
もしくは不動産屋に、直接オークション形式で買取価格を出してもらえば良いです。
条件は、残代金支払い後、一定期間そのまま自宅に住み続けるという条件付きで、です。
おそらくほとんどの不動産屋がリースバック会社より高い金額を出してくるはずですが、リースバック貨車の方が高ければ、良いリリースバック会社という事になります。

賃貸価格の正しさを確認する
リースバックと言っても、相場より高い家賃で借りることになれば、メリットは薄くなってしまいます。ですからこちらも同様に、地元の賃貸会社に賃料相場を聞けば教えてくれると思います。
相場賃料とかわらない賃貸額の提示であれば、そのリースバック会社は良心的だということです。
逆に相場よりもかなり高い賃貸額を提示してきた場合は、「長く住んでもらったら困る」という気持ちがあふれているリースバック会社という事です。
リースバックとリバースモーゲージの違いについて
非常に簡単に述べると、
リバースモーゲージは「銀行(金融庁)が考えた金融商品」
リースバックは「不動産屋が考えたサービス」
ということです。
銀行が上で、不動産屋が下で、といったことを言うつもりはありませんが、これをみてどうご覧になられますでしょうか。
リバースモーゲージの仕組みやメリットデメリット、どういった人向きなのか、については別記事にしていますので合わせてご覧くらんださい。

まとめ:リースバックにこだわらず、協力してくれる不動産屋をみつける
リースバックはシステムは素晴らしいものの、「安く買い叩き、高い賃料で貸し出す」という利益優先のスキームです。決して慈善事業ではありません。
特に高齢の方にとっては、一時金どころか、命のお金を浪費する形になりかねません。
つまりリースバックがターゲットとしている「老後資金の獲得」と「自宅に住み続ける」ことを望む高齢の方には向かないシステムなのです。

住み替えであれば、リースバック会社でなくても、そういう名前を使わないだけで、同様のお手伝いが出来る不動産屋は必ず存在します。
必要なのは「なるべく相場に近い買取価格」と「適正な賃料」です。
※実際には賃貸期間は1年~2年間と制限することが条件となることが殆どです。
知らないと損をする
不動産の典型的なお話です。
美味しい話には裏があります。
相場より安い物件に、良い物件は存在しないのと同じことです。
大切な不動産を無駄にしないためにも、よければまたこのブログの他の記事もご覧下さい。
ではまた!