現在新築戸建やリフォームにおいて、木材不足が叫ばれています。
皆さんも何となく「ウッドショック」とニュース等で目にされたことがあるのではないでしょうか。
「木材不足で新築の建築工事が進まない」
もう実際に起こっている出来事です。

実はこの問題、木材の不足というだけにとどまらず、今後木材の高騰が予想されており、皆さんの新築計画、もしくはリフォーム計画にも影響が出る可能性があります。
昨年にも一時期、コロナの影響で中国の生産体制が止まったことによる、キッチン不足、浴室不足が問題となり、工期が遅れるという問題が発生しました。(割合早くに解消はされましたが)あの時より影響が大きいと予想されます。
今回は、2021年6月時点での原因と今後の見通しについて、私自身が各方面へのヒアリングを行い回答を得ましたので、その内容についてできる限り分かりやすく解説します。
結論:木材不足はコンテナ不足と、米・中国での木材需要増加が原因
木材の不足は、
- コロナの影響による輸送用コンテナの不足
- アメリカ・中国での戸建て需要の増加に伴う木材需要の大幅な増加
- アメリカと中国による木材の高値買い
これらがが原因です。
そしてこれらが日本に木材が入ってこない原因となり、日本の新築工事の見通しが立たなくなってきているのです。
原因①:コンテナ不足で木材の輸入に支障
現在、日本で使用されている木材のうち約7割が海外からの輸入に頼っており、残りの約3割ほどが国内で賄っている状況です。
海外から木材を海外から運ぶには「コンテナ」を使用する必要がありますが、その「コンテナ」が不足していることにより、影響が大きくなってます。

「コンテナ」は当然木材だけを運ぶものではありません。
在宅ワークや巣ごもりの影響で様々な物の需要は増加しており、運ぶものがどんどん増えている影響で、その「コンテナ」自体の数が不足し出しています。
そして「コンテナ」には積み込み・荷下ろしという人手が必要ですが、その人手も不足しており、もし木材があったとしても、なかなか運べない、運べたとしてもどこかで留まったままという状況になっているのです。
日本の木材事情
日本には山や森林が沢山ありますので、「そこの木を沢山使えばいいのでは」
という声もあると思うのですが、2つの理由から難しくなっています。

①現在日本では、林業を営んでいる方自体の減少もあり、大量供給が難しいこと
②単純に日本の木材は、海外の木材に比べて「高い」こと
よって多量にしかも安く仕入れられる、海外の木材に頼るようになっています。
※今回はその2つの林業事情については長くなりそうなので述べません。
原因②:アメリカや、中国での木材の需要が大幅に増加
アメリカではコロナによる、感染拡大に伴い、郊外での一戸建て需要が増加し、さらに低金利政策も相まって、今後も多くの建築が予定されています。
また中国でも封じ込め(?)に成功(?)し、早期に経済活動が再開されたため、木材の消費並びに、戸建の供給も大幅に増加し、木材の消費が増加しました。

そのためアメリカと中国での需要と消費が増大し、日本への供給が減少しました。
原因③:アメリカや、中国での高値仕入れ
この木材の需要が大幅に増加してる中、アメリカと中国は、経済背景をバックに高値でもどんどん仕入れていってます。
当然木材を売る業者は高く買ってくれるところを優先するのは当然の事です。
日経平均株価が実体経済を表していない、と言われる通り日本の多くの仕入れ業者はその値段で買えないため、日本は更に割り当てが減少しているのです。
まさに負のスパイラルに陥ってしまっているのが、現状となります。
今後はどうなる?各業界の現状をヒアリングした結果
仕事の取引上、良くお世話になっている業者さんへ現状のヒアリングをしました。
もちろん、全国的に一律の傾向を示すわけではありませんので、その辺りは参考までにご覧ください。
某大手木造系住宅メーカーの声

当社では、カナダの木を中心に使用しており、また国産の木も押さえているため当面は施工用の木材が不足したりすることはありません。
ただし、既に建築単価は値上がりしていますので、購入される方がシビアになってきました、、、
現在カナダの木を中心に使用しており、また国産の木もある程度の量を押さえてため当面は施工用の木材が不足したりすることは無い様子。
ただし、今後は全国的に国産の木材の割合が多くなってくるため、すでに4月から
『坪単価が2~4万円』上がってきているとのこと。
50坪のお家なら今までより200万値上がりする、という意味でもあるので、購入のタイミングをシビアに検討する方が増えているとのこと。
1年後に解消されていなければ更なる坪単価の値上げや、工事自体の調整が必要になるかもという事でした。
大手ビルダー(建て売り屋さん)の声

うちはまだロット大きめに発注してるから資材的にはまだ余裕はあるけど、それでも1年続けば持たないかもね、、
何とかしようとアカシアの木を使ってみたりもしたけど、色に違和感があるからまだ使えないかな、、
大きなロットで大量発注をしているため、こちらもすぐには施工できない程不足するということは無いとのこと。
現在でも今後の対策として「アカシア」の木の使用を検討したりしているそうですが、色の違い(赤黒い)が見た目への影響が大きく、切り替えるまでには判断できないという事です。
ただし、こちらも1年後の木材の発注が出来るかどうか、見通しが立っていないため、今建築しているもので使い切れば、今後は土地として売っていくかも、とのことでした。
※一部の新築業者では工期の遅延を「特約」で対応しようとしているところがありますが、内容には要注意!という記事はコチラ

地元工務店の声

いやぁ、、、すでに木が入ってきてなくて工事が出来ないのよ、、
お客さんにも、国産の木に変えてもいいか聞いてるんだけど、やっぱ高くて無理だわ、、
困った、、、、
大手と違って大量発注や在庫のストックがないため、既に木材の供給が滞っており、建築の見通しが立たないため、国産木材への切り替えなども提案しているようですが、価格が格段に上がるため、非常に厳しいとのことです。
リフォーム業者の声

今のところ、大きな問題にはなっていませんが、フローリングとか、壁の下地のボードとか、その内影響が出そうで怖いです。
また中国の方では設備の生産が遅れだしているみたいですよ。
建築会社に比べると影響は少ないものの、すでにフローリングや、壁の下地などに影響が出始めており、主に床、壁関係のリフォーム費用にもいずれ影響が出ると予想しています。
また中国で設備の生産がまた滞ってきているようです。
これは以前とは違い、中国で戸建ての建築ラッシュが始まっており自国で消費が増加したためです。
特に床・壁関係のリフォームをご検討の方は、ある程度判断を早めにする方が良いのかもしれません。
また、中古を購入して、リフォームして住もうという方も、今後の動向次第では、床や壁に関して資材が不足する事も予想されるため、早めの見積もりが対策になると思います。

まとめ:将来、木材不足が解消されたとしても木材価格は高騰したまま
- 規模の大きくないところでは、既に工期が読めない状況
- 住宅メーカーやビルダーも1年後の見通しは不透明
- 仮になんとか木材の確保が出来たとしても、価格が高騰
これが現状です。
さらに、アメリカと中国の需要と消費が減らない限り、それを高値でも購入し続ける状況が続いたとしたら、、、木材不足が解消されたとしても
木材自体の価格が上がったまま
になるのではないかと、ヒアリングした業者さんは口を揃えて言ってました。
今ご検討の方は、現状を踏まえて、影響があるのないのかを、確認していく必要があります。
今なら木材が確保出来ているなら、思い切って進めてしまうのも選択肢としては有力かもしれません。待っていても、価格は下がらす、更に建築費用が上がるリスクもあるからです。
中古戸建ての相場上昇の可能性あり
また、状況次第では新築戸建てから中古戸建てに切り替えてるべきタイミングがやってくるかもしれません。
中古物件でもリフォーム・リノベーションによって希望が叶う事もありますので、選択肢の一つとして考慮してみて下さい。

さらに、中古戸建ての売却を検討されている方からすると、新築の供給が滞るかもしれない現状、中古住宅とリフォームの需要が増大する事になるかもしれません。
つまり、木材不足が、中古戸建ての相場を上げるかもしれないのです。
売却を検討している方も、購入を検討している方も今後の様子を注視する必要がありますね。

コロナの影響がこんなところにも出るなんて恥ずかしながら想像すらできませんでした。
コロナの現状もそうですが、木材の供給も含めて早く「普通の日常」に戻って欲しいものです。
ではまた。