不動産という高額の買い物において価格交渉(値引き交渉)が成功すればそれは大きな支払いの助けになりますよね。
ただし家電量販店での値引き交渉とは違って(最近はネット購入なのでそういう事も少ないのでしょうか、、)人生で何度も経験しない不動産購入の値引きについて、どんな物件だと価格交渉がしやすいのかどうか、どんな物件だと成功しにくいのかという疑問があるのではないでしょうか。
また、どの売主も「値引き交渉応じます」とは言ってくれません。
言ってしまうと売り出し価格の意味がなくなるからです。
今回は25年以上不動産の現場で数々の交渉を見てきた私が、「価格交渉が成功しやすい物件・価格交渉が成功しにくい物件の特徴」についてお話させていただきます。
更に、これを見れば、
- 販売価格はどうやって決まる
- 価格交渉の基本ルール
- やってはいけない交渉の仕方
- 上手な交渉の仕方
が合わせて分かります。
結論:「売れ残り・期限付き売却・熱心過ぎる売主」物件は価格交渉しやすい
長年不動産の売却をお手伝いしていると、価格交渉が成功しやすい物件の特徴が見えてきます。
そこで、どんな物件であれば価格交渉が成功しやすいのかについて3つの特徴を述べていきます。
・長く売れ残っている物件
・期限が決められれている物件
・内覧時に売主自身で家の説明をしてくれる物件
長く売れ残っている場合
これは非常に分かりやすい特徴だと思います。
ただし、一般の方はずっと物件の動向をチェックしているわけではないので、いつから売り出しているかご存じなければ、不動産屋に直接聞いてみるのが良いと思います。

この物件って、いつから売却していますか?
ただし、悪徳不動産であれば「長く売れていない=人気がない」と思われるのが嫌で嘘をつく、もしくは煙に巻く可能性がありますので、注意が必要です。

えー、そうですね、、数か月位ですかね、、、
そこで、

1.近所に少し知り合いがいて、結構長いと言っていたような、、
2.ほかの不動産屋が、結構長いと言っていたような、、
そちらで確認してみましょうか?
もし要領を得ない回答であれば、上記の1か2かお好きな方で聞いて(脅して)みて下さい。
売れ残りが事実であれば、逃げられないでしょう。

えー、そうですね、、まぁ、そのあの1年くらいです、、
まぁ長いというか、じっくり売っているというか、慎重というか、みたいな?
「いつからが売れ残っているというのか」は、売主様の感覚や、売り方のスタンスにもよりますが、大体半年も売れずに残っていると、売主様も精神的に疲れてくることが多く、価格交渉が通りやすくなります。
これは売却開始から平均3か月~半年ほどで大部分の物件が成約になるという、事実があるからです。

ちなみに、誤解のないように言っておきたいのですが「売れ残り=人気がない」
ではありません。(そういうのもありますが、、)
時期タイミング・不動産屋のレベル・実力・広告力・営業力によっても売れるか売れないか変わりますし、不動産は一つとて同じ不動産というのは無く、当然人により合う合わないがあります。
というか、値段が下がればすぐに売れる物件だって、この世にはたくさん眠っています。
ですからその物件が気に入ったのならば、長く売れていないからと言って気にする必要はなく、きちんと価格交渉をしてみましょう。
売却に期限がある場合
いついつまでに売らなければいけない、といった期限が決められている物件も交渉がしやすい物件となります。
簡単に言うと、「売却による資金で、次の何か(購入・費用)に充てる」場合です。
- ◇月に新築が完成するので、それまでには売却して、資金充当をしなければならない
- 住み替えで□月までには売却して、次の買い替え先の資金に充てなければならない
- △月までに、事業資金として売却資金を充てなければならない
こういった場合にも、時期が近付けば近づくほど、売主様には焦りが出てきますので、価格交渉に応じて貰いやすくなります。

売却の期日に制限がある場合、銀行からの要請などもあり【買取保証】をつけている場合も多く、これが逆に売主様の足かせになる場合もあるのです。
例えば
現在5月、分譲マンション住まい。
ローンの残高が2,000万円ほど。
住み替えで10月に完成する新築を購入するも、二重ローンは組めず、住宅ローン利用時に
「新築の引き渡しまでに、自宅の売却」が条件になる。
そして3,580万円でマンションを売却開始。
万が一売れなかったら困るので、不動産屋に頼み2,700万円での買取保証を付けてもらう。
新築の完成が10月なので、9月末までに売れなかったら2,700万円で買取契約をする話になる。
こんな話の場合、もし8月時点でまだ成約になっていなければ、売主様は相当焦っているはずです。
そしてここでのポイントは、9月末までに売れなければ2,500万円で買取りが発動してしまうので、
「それならば現在3,580万円のところ、3,000万円まで価格交渉してでもそちらに売った方が全然よい」
という精神状態になっていてもおかしくないということです。
つまり、価格交渉が成功しやすい状況に(勝手に)なっているという事です。
この辺りも不動産屋に、売却理由と引渡しの時期について、確認できていれば通常よりも有利に交渉が出来るかもしれません。
熱心過ぎる売主の場合
これは居住中物件限定ですし、非常に線引きが難しいのですが、熱心過ぎる売主の物件というのは案外価格交渉がしやすい傾向にあります。
売りたい気持ちが前面に出過ぎているからです。

自宅を高く売ってきた人の特徴として、「どっしり構えている」という特徴があります。
※別記事にしてありますので、合わせてご覧下さい。

案内時に、不動産屋よりも前に出て、家の説明をする、誘導する、見学者に質問をする、そういう売主さん見たことありませんか?
これは、
「不動産屋を信頼していない」
「自分で説明しなければ気が済まない」
など、いくつか理由があると思うのですが、要するに「不安」なのです、だから前に出てくるわけです。
もちろん悪い事ではありませんが、結果的に、見学者が売主様からの圧力を感じて引いてしまうケースが殆どです。
不安な気持ちがあるということは、「早く売りたい」という事に繋がります。
だから案外熱心な売主様ほど、価格交渉がしやすいということになります。
価格交渉が出来る可能性の低い物件
逆に、価格交渉が成功しにくい物件というのもあります。
・売却を開始したばかり
・問い合わせや案内が多い物件
・価格変更(値下げ)をしたばかりの物件
・この価格で理解してくれる人にだけ売れれば良いというこだわり物件
売却して、まだ時間が経っていない場合
まだ売り出して時間が経っていない場合は、「値引きしてください」といっても、そもそも判断が出来ません。
最初からある程度「この程度までなら売ろう」と決めている場合ならともかく、まだ売り出したばかりだと、他にも購入希望者現れるかもしれないし、、という期待しかありませんので、価格交渉は成功しにくくなります。
問い合わせや案内が多い物件
問い合わせや案内が多い物件も、価格交渉は成功しにくいです。
毎週毎週案内が沢山入っているのであれば、売主さん的にもお家に自信が持てますし、不動産屋的にも、大きな価格交渉は持って行き辛いです。
仮に価格交渉しても、「1か月ほど様子を見て、他に商談なければ考えます」的な答えが返ってくるのが関の山です。
価格変更(値下げ)をしたばかりの場合
しばらく売れないでいると、どこかで値段(価格)変更をすることがあります。
そこで価格交渉をしようと思っても、下げたばかりであれば応じてはいただくのは中々難しいのではないでしょうか。
こういった場合、不動産屋からは当然、「値段下げたばかりなので難しい」と聞いていることだと思います。それを聞いた上で更に強引な価格交渉持っていくと、売主様からの印象も良くはないでしょう。
こだわり物件の場合
時間がかかったとしても、この価格で理解してくれる人にだけ売れれば良い、というこだわり物件の場合も価格交渉が難しいです。
こういったお家は、HPや物件資料にも、そのこだわりが強く推されていると思いますので、比較的分かりやすいと思います。
私も経験したのが、3階がゴルフのパターの練習が出来るお家とか、改装に数千万円かかっているお家とか、ラウンジバーみたいになっているお家とか、、

そういったこだわりの強いお家の場合、大きな価格交渉は望みづらいですね。
販売価格の決め方を知る
値引き交渉をする前に、そもそも販売価格はどうやって決まるのか、を知る必要があります。
値引き交渉とは基本的には、「少しでも安く買いたい」ですが、その根底には「価格に納得できないから値引きして欲しい」、であるはずです。
ではその販売価格というのは不動産屋が出した査定額でしょうか?
答えはNO、です。
『売主側が事情に合わせて最終決定をしている』です。
同じマンション内で同じ階で同じ間取りであったとしても、売主側の事情が異なれば売却価格が異なることだってあるのです。
査定額が3,000万円の不動産だとしても、住宅ローンの残り(残債)が3,100万円残っていればそれ以下には出来ません。
更に諸費用もかかりますので、手残りがマイナスにしたくなければ3,300万円からスタートする必要があります。
逆に、残債もなく、ある程度早めに売却したいケースであれば、査定額が3,000万円であったとしても2,800万円からスタートするかもしれないのです。
相場より高ければ交渉しやすいは間違い
でから相場より高いから交渉しやすいかも、とか相場より安いから交渉できないかも、というのは正しくありません。
あくまでも売主様の事情によって異なるので、不動産屋にしっかりと状況を確認しなければなりません。
いつ、誰が、どうやって値段交渉をする?
いつ交渉をするかといえば、原則は、購入申込のタイミングになります。
この価格になれば考えます、では売主はいつまでも取り合ってはくれません。どこまでいっても「いくらなら購入してくれるの?」です。
交渉自体は不動産屋がやってくれますので、直接対面で交渉ということはありません。
ですからこの価格になれば購入する、と言わなければなりません。
つまり購入申込書を提示することにより、価格交渉をスタートさせるのです。
この価格になれば、
・手付金はいくら用意している
・この日には契約できる準備が出来ている
・ローンの事前審査はこの銀行で承認を貰っている
という準備と覚悟を伝えて、売主に判断してもうのです。
この辺りについては別の記事で詳しく書いています。
兄弟記事のようなものですので合わせてご覧ください。

やってはいけない価格交渉の仕方
価格交渉は売主様と直接行う訳ではありませんが、それでもやってはいけない交渉の仕方があります。
要するに、決めるのは売主様なので、売主様を不快にさせるような交渉の仕方はNGです。
私の思う相場観、で交渉
先ほど述べたように、売主は売主の都合で売却価格を決められています。

私が思うのにはこれくらいが相場的に妥当だと思うので、この値段で交渉したいです。
と言ったところで売主様からしたら、知ったこっちゃありませんし、それが分かった上で、その価格に設定しているのです。
その言い方だと、「売主は価格を間違っている」と言っているのと同じなので、基本的に気分を悪くされる交渉の仕方になります。おすすめしません。
駆け引きのつもりで最初にガツンとかます交渉
最初に通らないと分かっている大きな金額をガツンと要望して、希望の金額まで交渉していく方法もおすすめしません。
最初の金額が大きかったからこの位の金額なら小さく見えるだろうという類の駆け引きなのだと思いますが、最初に大きすぎる金額を提示すると、売主側は自分の不動産を否定されたみたいで不快感を覚えるはずです。
仮にもっと上の金額で買うつもりがあったとしても、売主側から

もうこんな失礼な方は結構です、断って下さい。
と言われて交渉が打ち切りになれば、本来出来たはずの交渉のキャッチボールが出来なくなるリスクがあります。
私の経験上、売主様は駆け引きなど求めていません。
故障個所や不具合箇所を直したい、新しくしたい
故障個所や不具合箇所を理由にする、一般的な方法です。
①〇〇が故障しています、修理したいのでその分を交渉したい
②建物検査で●●の劣化があったので、今後安心して住むためにそこは住む前にメンテナンスしたいのでその分を交渉したい
中古物件ですので、何らかの不具合はあると思いますので、そこを理由に売主様に伝えてもらう方法です。
ただし、

そこは事前に不具合だと伝えてあり、それ前提の価格です。
と言われることがありますので、そうなると交渉は難しくなってしまいます。
上手く行く交渉のコツ
価格交渉が上手く行くコツは
お金の話なので、ストレートにお金を理由にする
ことです。
資金的な事情を理由にするという、一番本質的なお願いです。
買主様側の個人的な背景・思い・色々な事情等があると思いますが、何を理由にしようと最後はトータルのお金の話です。

①銀行の融資でこれが上限金額だった
②自分で用意できる資金で目一杯の金額
③両親からの援助もありましたが、これで目一杯
正直にその旨を伝えると良いと思います。
まため:価格交渉が上手くいく心構えと、それ以外にもっと必要なこと
ある程度価格交渉が成功しそうな物件を確認して、購入申し込みを通じて価格交渉をする。
理由は予算の事情で交渉をする、文章にするこれだけのことですが、売主様の立場で言うと「身を切る思い」で決断されるはずです。
不動産の価格は大きいため、つい

「端数」の80万円だけでも引いてほしいな、、、、
というような思いになりがちですが、80万円といえばかなりの大金です。
売却価格からすると数%のことかもしれませんが、ご自身が売主の立場だとしたら、その大きさ・大切さがお分かりだと思います。
「80万円だけ」ではなく、「80万円も」です。その気持ちは忘れずに交渉に臨んで欲しいと思います。
そして、仮にいくら80万円交渉が成功したとしても、引っ越し後に不具合・トラブルが出て100万円もの出費があれば、意味はありません。
そういった意味でも価格交渉だけではなく、購入に対するの保証サービスや、建物の状態をよく理解して購入する必要があります。


価格交渉は成功して当たり前ではありません。
だからこそ、金額に対する感覚がマヒしないよう、意識していただければと思います。

良い金額交渉になるよう祈っております。
ではまた!