不動産を購入(売却)したけれど、様々な事情で契約を解除(解約)しなければいけない時もあると思います。
そして解約というのは、やはり相手方にとって望ましいことではなく、きちんと対応しないと、大きなトラブルになることがあります。
ここを見てくださっているという事は、何らかのお考え・お悩みがあるという事でしょうか。
今回は過去に、「解約になったのは2回だけ」、という現役不動産屋の私が仲介での解約について、分かりやすく説明していきます。
※まぁ私の力で解約にならなかったわけではありませんが、、
これを見ると、どういったケースで契約が解除出来るのか、だれの都合で解除できるのかが分かります。
「解除」と「解約」の違い(豆知識)
「解除」と「解約」の違いは何ですか?
と聞かれたら
「そんなことを今まで気にしたことがない」
と答えるのが正解です。
不動産屋でもこの2つをきちんと使い分けている人は非常に少ないです。(まぁ通じますけど)
「解除」は当事者の一方的な申し出により、その効力が最初からなかったこととする、というものです。(この後、いくつかでてきます。)
「解約」は過去にさかのぼって無かったことには出来ない場合、将来に向けてのみ、効力を消滅させる、ということです。(分かりやすく言うと賃貸契約は、今までの契約を無かったことには出来ないので解約、になりますね。)
不動産売買契約書には4つの解除(解約)について記載がある
実は、皆さん不動産の売買契約の時にこの「解除条項」については説明を受けているはずです。

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分かります。
一回聞いただけで全部理解するのはとても難しいですし、だれもやめようと思って購入(売却)しているわけではありませんし、中々頭には入ってきませんよね?
大丈夫です、もう一度説明します。
※この契約書はFRKという大手・中堅の多くが会員となっている団体で使用されている契約書約款に基づきます。
手付金による解約
売主・買主は、本契約の解除期日までであれば、互いに書面により通知をして、解除することが出来ます
手付解除
仲介で不動産を購入(売却)するときに、契約時に「手付金」を売主様に支払った(受領した)と思います。

売買契約書の約款(取り決め)には、契約してから引渡しまでの間に、
「やっぱり契約をやめたい」
となった時に、この手付金を放棄することによって契約の解除をすることが出来るという
「手付解除」
という特約が入っています。

例えば2,000万円で不動産の購入契約をして、手付金として200万円を売主様に払ったものの、契約してから10日後に、1,200万円でもっと良いお家が売りに出たので、解約したくなった場合に
「手付金で支払った200万円をそのまま売主様に差し上げますので、解約させて下さい」
という事が可能なように、特約として設定がされています。(返還請求権の放棄)
逆に売主様側からも、2,000万円で売却の契約してもらったけど、海外から息子が急に戻ってきて家を使用することになったため、売ることをやめたいとなった場合に
「受け取った手付金200万円をそのまま買主様にお返しした上で、さらに追加で200万円(合計400万円)を支払うので、解除させて下さい」
という事が出来るようにしてあるのです。(文字通りの倍返し)
要は言い出した方が手付金を元に(損をして)解除できる、という形になります。

またこの場合大事なのは
・理由は問わない
・相手方の同意は不要
という事です。つまりこちらの都合で解除することが出来ます。
ただし「手付解除期日」が設定されていますので、今すぐ契約書を見直してください。
この期日内であれば、ということです。
この期日を超えてしまうと、相手方の同意がなければ解除できません。(「合意解約」)
また『自己都合による解除』になるため、仲介契約自体は無くなったわけではないので
仲介手数料の支払いは必要
になります。
私も実際、家を売却したもののご家族が痴呆になってしまい、治療のために環境を変えることが出来なくなったために、手付金を倍返しして、契約を解除された方もいらっしゃいました。
融資利用の特約よる解除
表記融資承認取得期日までに、融資の全部または融資の一部の金額につき承認が得られない時、または否認された時、買主は売主に対して、表記契約解除期日までであれば、本契約を解除することが出来ます
融資利用の特約による解除
住宅ローンを利用する場合、原則契約前に「事前審査」を受けて、融資の事前承認を貰っていると思います。これは何故か。
「融資利用の特約による解除」
という解除条項への担保のためです。これは
事前審査で事前承認を貰っていたものの、「本審査」で融資の一部が減額、もしくは全部が否認された場合は、解除することが出来る。
という特約です。

お金を貸す、貸さないというのは、買主様側で決めることが出来なくて、
『銀行の都合』によって決められるためです。
事前審査ではOK、と言われていても、経済事情や、銀行内の事情が変わったため、契約後の本審査で一部減額、もしくはやっぱり貸さない、となってしまった場合は当然計画が崩れてしまうために
契約時に遡って、白紙解除が出来る
という事です。住宅ローンがダメだったというこちらの都合で解除は出来るのです。
買主様の責任ではない、ということですね。
ですから、「契約自体」が無かったことになるため、先ほどの手付解除とは違い、仲介手数料を支払う必要はありませんし、手付金も返ってきます。
※厳密には、契約書に貼った収入印紙は還ってきません
ただしこれも「融資承認取得期日」という設定がされていますので、それまでに本審査を受けていなければ当然使えません。
この期日もしっかりと確認しましょう。
その日を過ぎてしまっていると、この項目での解除は使えません。
義務を果たさないと、権利は発生しないということです。
また事前審査の承認を受けた後、車をローンで購入するとか、消費者金融で借りて返さないとか、転職する等、買主様側の事情で本承認が下りない場合もこの特約では解除することは出来ませんのでご注意ください。

引渡し前の滅失・毀損による解除
売主、買主は、本物件の引渡し完了前に天災地変、その他売主、買主のいずれの責にも帰すことのできない事由により、本物件が滅失または毀損して本契約の履行が不可能となったとき、互いに書面により通知して、本契約を解除することができます。
引渡し完了前の滅失・毀損による解除
契約してから、引き渡しまでの間に、地震や、竜巻、もしくは第三者による放火など、売主様にも買主様にも責任のないところで、家やマンションが無くなってしまったり、大きく壊れてしまった時は、
契約時に遡って、白紙解除が出来る
という特約です。
※滅失≒全壊、既存≒半壊のようなイメージを持ってもらえればいいです。

多くの方は家を使用するために、また土地は建てるために購入しているわけです。
それが家が全壊してしまったり、元に戻せない程壊れてしまったり、土地自体に大きな段差が出来てしまったりすると買主様は目的を達成できないために解除が出来るという内容です。
どちらの都合になるかは分かりませんが、解除することが出来ます。
こちらも、「契約自体」が無かったことになるため、仲介手数料を支払う必要はありませんし、手付金も返ってきます。
契約違約による解除
こちらは少しややこしいです。
なるべくかみ砕いてとは思いますが、間違った伝え方は出来ないため、頑張ってお付き合いください。
解除の要件
①契約違反の事実がある事
契約を違反による解除事由(解除の理由になる事項)にあたるかどうかは、項目によって重い・軽いがあるります。
- 売買代金の支払いをしない(双方)
- 引渡しをしない(売主側)
- 抵当権の抹消をしない(売主側)
- 所有権の移転登記等(双方)
これらは、その重要性(重い)から原則解除事由になると思われます。
逆に
- 境界の明示(売主側)
- 物件状況等報告(売主側)
- 融資の申し込み(買主側)
- 諸規定の継承(双方)
に違反しても、実害が出ればともかくとして、その内容(軽い)から解除事由になりにくい事も考えれます。
ここはケースバイケースの上、非常にややこしいため、トラブルになった際に良く焦点となる内容です。不動産屋によく相談して下さい。

②契約違反が違法であること
さらに、契約違反をしたとしても、それが「違法行為」でない場合解除権は発生しません。
例えばに買主側の「代金を支払わない」という契約違反の事実があっても、売主側が引渡し、所有権移転登記申請手続きを怠って入れば、この契約違反は同時履行の関係性から「違法」にはなりません。
こちらも、義務を果たさないと、権利は発生しないということです。
催告とその手続き
違約した側へ、相当期間内に契約の履行を促すことです。
すべきことして下さいと、催促して、それでもなされないときは解除して、違約金の請求が出来るのです。
手続きとしては書面により明文化します。通常は内容証明にて例えば
「代金を本書面到着後7日以内にお支払いください、お支払いいただけないときは期間経過をもって本契約を解除します」
という内容で通告する形になります。

解除の効果について
違約金の請求
「催告」した上で、それでも約束を守っていただけないという時には『違約金』を実際に被害を受けた金額の大小に関わらず、請求することが出来ます。
違約金は一般的には成約価格の1割(10%)と契約書上、予め決められています。
何故違約金を予め決めておくのか
違約金を決めようと思うと、実害の証明が必要になりますが、その実害の証明が難しい上に、時間もかかりますし、なにより手間だからです。
契約が成就しない上に、裁判で何年もかかってしまう、、これらを避けるために予め違約金が決められている訳です。この違約金の請求に関しては、損害の証明は必要ありません。

原状回復
引き渡しを受けていれば明け渡しを、登記が移転していれば抹消を、といった契約前の状態に戻す必要があります。これを原状回復と言います。
契約違反による解除はまとめると
違約した側であるなら、こちらの都合で解除は出来ません。
違約された方であるならば、解除が出来ます。
淡々と手続きしていくために:信頼できる不動産屋で契約をする
全ては契約書に記載があります。
・手付解除
・融資の減額や否認に関する解除
・滅失・毀損による解除
・契約違反による解除
それに加えて、「合意解除」や「消費者契約法による解除」などもありますが、今回は省きます。
どれも良く内容を確認して、解除の手続きを取りましょう。
手続きは不動産屋に言えば全部書類を用意してくれます。
その為には「信頼できる不動産屋」で契約をする必要があります。
本当は手付金の没収が出来たはずなのに、不動産屋の知識不足で変な形の合意解約をしてい、更にトラブルになったといった例もあります。

せっかくの縁があった不動産であっても、様々な理由で解約せざるを得ない時があります。
だからこそ、淡々と手続きをして解約をし、次のステップに進みたいですね。
ではまた。