何事においても『掘り出し物』『お得な』っていう言葉の響きは魅力的です。
まして不動産において『掘り出し物』『お得な』物件なんて出会えたら最高ですよね。
しかし悲しい事を言いますが
不動産において、掘り出し物・お得な不動産というものは存在しないのです。
正しく言うと掘り出し物・お得な物件というのは、なかなか一般の方には情報として回ってこないという事なのです。
何故か。
それは不動産業界と、それに関わる買取業者との利益構造にあるのです。
今回は20年以上不動産に携わっている私が、その理由について解説します。
そしてそれでも、良い物件情報が回ってくるパターンについても最後にお話いたします。
掘り出し物不動産とは「相場より安い状態」の不動産
掘り出し物・お得な不動産とは、
「相場よりかなり安い」状況の不動産
ということですよね。
ここでポイントは「かなり安い」ということです。

そんなお得な不動産があったら、すぐに紹介して!!
そう思いますよね。
しかし、残念ながらここで一般のお客様にはなかなか情報が回ってこないのです。
日々来る査定にの中には、「何とかして」案件も稀にある
不動産屋には日々(規模による)、査定の依頼が来ます。
その中には、「安くなってもいいから、急いで売りたい」という依頼もあったりします。
例えば、
- 「相続したけど、遠方だし、管理も大変だし、家の中の荷物の整理も手が回らない。」
- 「事業の資金繰りが厳しいので、早急に不動産を資金化したい。」
- 「近隣トラブルで家を売りたい、周りに知られずに売りたい。」
- 「孤独死の後、発見が遅れて大変な事になったので、何とか売りたい」
などなど、理由はそれぞれですが、共通しているのは「なんとかして」ということです。

急ぎで売却が必要な不動産があれば、不動産屋は買取に走る
そうなった時に不動産屋はどうするのか。
その時に、その不動産を丁度、ピンポイントで待っているお客様を抱えている不動産屋は滅多にありません。
直ぐに資金が用意出来て、
すぐに契約出来て、
ある程度様々な不動産の状況にも対応できる
この条件に当てはまるのは、「買取業者」もしは「自社による買取」です。
(買取については下記記事をご覧ください。)

不動産屋とすると、すぐに契約をして、その後もう一度買取った不動産を再度売却することにより同じ物件で2度仲介手数料を手にする機会ができるのです。
正しい表現ではないかもしれませんが、分かりやすく言うと「一粒で二度おいしい」ということです。
具体的に話します。
例えば相場が3,000万円のエリアで、売主様側のご事情によって、急ぐため2,000万円で売りたいという話が合った場合、そのまま2,000万円で一般の方に売約した場合、すぐに売れるかもしれませんが、仲介手数料はその取引1回で終わります。

しかし
一度買取業者に2,000万円で買取ってもらい、その後リフォームしたその物件を3,200万円で再度仲介することよって、2回仲介の機会があるのです。

もちろん相場は3,000万円ですので、リフォームして3,200万円であればおかしい話ではないので、きっちりと売れるのです。
同条件なら、掘り出し物の不動産は買取業者に売却される

では、買取業者と同じ金額出しますので、売ってください。
私なら再販売しないですし、大切に使いますよ。
という事も思われるかもしれません。
しかし、一般の方の購入と、不動産業者による購入は、実は同じではないのです。
売主様は個人の方に売却する場合は基本的に「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」
を負う必要があり、引き渡し後にリスクが発生します。

更に境界確定や、越境物に対する対応など、他にも売主様としての義務があるため、費用と時間がかかってしまいます。さらに「解約」のリスクも負わなけれなりません。
(境界等や、解約については下記記事をご覧ください。)


買取業者に売る場合は、契約不適合責任免責、設備の修復義務免責、境界確定は不要(隣地の認識だけ確認)、越境物も現状でOK、自ら解約はしない、等、プロして全責任を自分で負えるためこういった契約が出来るのです。
ですから、売主様とすれば、
同じ安く売るなら、「そのいったリスクを負わなくてよい」買取を選ぶ
ということになります。
こういう理由で、「掘り出し物」「お得な」不動産は一般市場には出回らないのです。
ではどうすれば情報が回ってくるのか:資金は確定させておく
では、絶対にそういった「掘り出し物」「お得な」不動産は情報として回ってこないのでしょうか。
無いわけではありません。
- 買取業者の予算が尽きているケース
- その地域は再販売するには需要が飽和しているケース
こういった時には、十分に情報が回ってくる可能性はあります。
あくまでも「再販売」を前提としているので、売れない地域では無理をしてまで買う業者は非常に少ないのです。
ですから、こういった物件がいつ情報として回ってきてもよいように準備が必要です。
- すぐ買える資金状況をつくっておく
- 直ぐに決断する覚悟もっておく
情報が回ってきてから、住宅ローンの審査をしても遅いかもしれません。
こういった物件は、当然欲しい方は沢山おられますので、現金購入でない場合、審査している間に、また少しでも迷っている間に他の方が購入します。
これは欲し出し物・お得不動産に関わらず、競争率の高い、条件の良い不動産に巡り合うための必須事項です。
物件が決まって無くても、事前審査は受けれますので(どこかの仮定物件は必要ですが)、いざ、という時にすぐ決断できるよう準備をしておいてください。
※事前審査を受けたからと言って、絶対にそこで借りないといけないわけではありません。

不動産業界の利益構造によって、なかなか「掘り出し物」・「お得」な不動産は市場に出てきません。
嫌なお話かもしれませんが、不動産屋も慈善事業でない以上買取に走ります。
それでも可能性は0ではないのです。
不動産屋だって人間です。不動産屋との付き合い次第や信頼関係次第によっても、その可能性は少しですが上がるかもしれませんね。
私も情で動くことだってあります。
ありますよ?
ではまた!